知の受け渡し
毎日、あたりまえのように行っているさまざまな事柄に、実はものすごい真理が秘められていたりする。そういうのを発見したときの喜びが大好きなんだよね、オレ。一週間くらい前だったかな。自分がやっている「コンサルタント」という仕事に思いを巡らせていたら、おもしろいことに気付いてしまったのね。もちろん、驚くほどの発見ではないのだけど、自分ではけっこう画期的な発想だったから、ここで書いておきたいと思ってね。
そもそも、「コンサルという仕事の本質はなんだろう?」って疑問から始まったのね。企業や個人に対して、彼らが望む結果に到達できるよう、ある種のアドバイスを提供するってことかな。あるいは、内部だけでは下しにくい「決断」のお手伝いをするってのもあるかもしれない。新たな視点を提供するとか、目的にたどり着くための別のルートを示すとかの役目も担っている気がする。
でね、オレがたどり着いた結論はこれだった。
「知を渡すこと」
うーん、言葉が一般的じゃないから、ちょっとわかりにくいかな? 言葉を選ばず、ものすごく簡単にいうならば、「教える」ってことなんだけどね。どうも、この「教える」という言葉は安っぽくてキライ。あと、どうしても上下関係を想起させてくれるよね。「先生から教わる」「師匠から教わる」「先輩から教わる」「親から教わる」みたいなね。本質的には「教える」なんだけど、もっと深いニュアンスがある。
たとえば、動物って「教え合う」ことはしないと思うのだけどどうかな。オレは動物学者じゃないから、なんともいえないんだけどね。ヘタなこというと、ムツゴロウさんとかに怒られるしね。でも、少なくとも犬や猫が、仲間や子供たちになにかを教えているシーンには遭遇したことがない。
やっぱり、彼らはDNAに刻まれた本能だけで行動しているんじゃないかな。もちろん、飼い主への接し方とか、食事やトイレの場所とか、「自分で学ぶ」ってことはあるように思うけどね。ある犬が、別の犬に「ドッグフードの場所はここだワン」とか教えているとは思えないでしょ。
対する我々人間はというと、「教える」ことで成り立っているように思わない? 親が子供にいろんなことを教え、学校に入ったら先生が教え、会社でも先輩が教える。その間、習い事でも教えてもらうし、恋人同士でも教え合ったりするよね。あと、間接的に、本やテレビ、映画といったメディアから教えてもらうことも多々あるでしょ。
じゃあ、もし人間の世界に「教える」という行為が存在しなかったとしたらどうなるか。おそらくね、
「すべての人がゼロから自力で発見していかなきゃならない」
ってことになるよね。万有引力の法則とか、相対性理論とか、恋の駆け引きとか、人としてどう生きるかとか、ありとあらゆるテーマを全部、自分で見つけなきゃならない。音楽にしても、美術にしても、文学にしても、映画にしても、法則や理論や創造のコツなんかを自分自身で発見しなければならないわけ。
するとどうなるか?
「だれも先に進めない」
ってことだよね。すなわち、「進歩ナシ」の世界なわけ。
土着の音楽から始まって、クラシック音楽が登場して、和声学みたいなものが確立されて、ブルースが生まれ、ジャズが誕生して、ロックが出てきて、ソウルミュージックが来て、テクノが発明され、パンクにヘビメタにヒップホップにワールドミュージック……。2009年に音楽を始める人って、これらの歴史すべてを数年のうちに体験できてしまうわけじゃない。で、その先に進める。
先人たちが体系化し、挑戦し、失敗し、あるいは大成功した「経験知」を、人生の何分の一かの時間で疑似体験できるってことだよね。つまり、我々はゼロから始めるのではなく、「続きから」やればいいってことなわけ。ね、これってすごいことだと思いません?
さらに、いまの世の中を見渡してみるとね、インターネットという恐るべき仕組みがあるじゃない。上に書いたような発想でこのメディアを見直してみるとさ、いかにコイツが素晴らしいかがわかるよね。他人の知識や情報や、人生経験や、感情やインスピレーションを、あっという間に自分のものにできちゃうわけだからね。それも世界中のだよ。
なんのために、なにを目指してそういう仕組みを作ったのかは、まだオレにはわからない。けれども、人間というのは「教える」すなわち、「知を受け渡す」ことで進化してきたことだけは間違いなさそうだ。先人の努力と経験を受けて、新たに生まれた人はその先を引き継ぐ。そのために、文字や言語が創られ、それによって書物が生まれ、さらなるメディアへと膨らんでいった。その究極の姿がいまのネットなんじゃないかと。
もちろんね、自分自身で体験してみないとわからないこともたくさんある。たとえば、恋愛小説や恋愛映画を100万本読んだり観たりしたからといって、恋のなんたるかがわかるわけない。でも、それらに触れることでなにかは得られるよね。「ああ、女性というのはこういうときに喜ぶのか」「男ってバカなんだ」とかね。その「知」を持って恋愛することで、少なくともゼロスタートじゃなくてすむかもしれないじゃない。
話は戻るけど、コンサルの本質は「知を渡すこと」とオレは定義してみた。とするとね、コンサルタントの条件というのは、人並み外れた「経験知」ということになるよね。人より多くの問題にぶつかり、それらに真っ向勝負を挑んで撃沈したり、なんとか乗り越えたり、あるいは逃げ出すこともあったり。失敗と成功のどちらにも、常人よりも多く出会っている。ハンパじゃない数の経験と感動を持っているってのが理想かな。
でもって、その経験知をどう使うかだよね。一言でいうならば、「踏み台にしてもらう」ってことだろうね。もし、そのコンサルタントに出会わなかったとしたら、気付くのに10年かかっていたことを、6時間くらいで会得できる。で、それがわかったら、その先に踏み出せる。「進化のための時間短縮」。そのための踏み台。これがオレの究極の答えだね。
我々が出版した『あり方の教科書』も、そういう意味では踏み台なんだろうな。なんてったって、平均年齢50歳弱の7人の経験知が詰まっているわけだからね。もしかしたら、3人分くらいの一生の時間があの本の中に凝縮されているかもしれないでしょ。あとは、その経験知の質だよね。こればかりは、読んでいただいて判断してもらうしかないんだけどね。
ところで、オレ自身はコンサルタントの条件を満たしているんだろうか? 当然ながら、この問いが沸き上がってくるよね。まぁ、幸か不幸か、幼少のころから世の中でいうところの「レール」から完全に外れた人生を送ってきたし、フリーの音楽家、IT雑誌の編集長、大手企業の顧問、JOYWOWという変な集団の一員という経歴からいえば、フツーじゃないことは確かだ。
あとは、子供のころから「常識」ってヤツに挑み続けて、少しでも真理を見つけようとしてきたっていうのも、わりと異質の経験かな。失敗の量もわりとハンパじゃなかったりする。決して苦労をしてきたっていうわけじゃなく、どちらかというと、いい加減にやって痛い目に遭ったってのが多いね。そうそう、いろんな業界にいたから、接した人種の数はそれなりに自慢できると思うな。どうだろうね。まだまだ修行が足りないかな?
いずれにしてもね、オレがコンサルの仕事をする限り、その役割ははっきりしている。オレという人間の「経験知」をお渡しすることですね。おもしろいことにね、人生というのは自然の流れに似ているというか、ほぼ、沿っているように思うのね。雨の日があれば曇りの日も、晴れの日もある。冬になれば雪が降って木枯らしが吹き、夏になれば灼熱の太陽に焼かれる。
そういう、天候の変化や四季の移り変わりとほぼ、同じような流れで動いてるとオレは信じているのね。もちろん、オレ自身が47年生きてきた経験知に基づく解釈ですよ。だから、雨が降ったら傘をさすとかね、風の強い日はコートを羽織るとか、雪がやむまで家から出ないとか、対処の仕方を経験から得ているかいないかで、「問題の捉え方」が違ってくるんじゃないかと思うわけですよ。
人生いろいろ、十人十色というけれども、降ってくるのはやっぱり雨や雪やひょうであって、バケツが落ちてきたりはしないんだよね。だから、素直になれさえすれば、他人の経験知というのがけっこう役に立つわけね。ほら、若いころ、親や年上の人にいわれて反発していたことが、大人になって理解できるってのがあるじゃない。あれがいい例だよね。
「オレの人生だ! おまえになにがわかる!」なんてツッパってみても、10年後に「ああ、やっぱあの人のいうとおりだったなぁ」ってなっちゃう。人の経験知を自分自身に役立てるってのも、やっぱりそれなりの経験が必要ってことだよね。
うん、そういう意味で、オレがいまやっている『男塾マンツーマン編』は、まさに「知を渡すこと」だと思うな。もし、それがとてもいい出会いで、オレ自身の経験知を少しでも使っていただけたら、おそらく何年分か何か月分かの人生を圧縮できるはず。そうして浮いた分の時間と労力を、さらに先に進むために費やしてもらう。うん、そうなったら本当にうれしいし、しあわせだな。2回目の11月22日(日)はまだ空きがあるから、ぜひ、「知の受け取り」に来てくださいね。
そうそう、12月6日の『阪本啓一ひとり会』。これ、本編はもちろんのこと、懇親会が楽しいよ。なんてったって、マリンタワー1階のmizumachi barというナイスな場所で、オレがひさびさのライブやるしね。ちょっと驚きの新曲をひっさげて登場したいと思ってる。あとね、おなじみの『JOYWOWテレビショッピング』も生でやりますよ。今回はみなさんに「いらなくなったもの」を持ち寄っていただいて、その場でオークション形式で売りさばくという企画。売り上げは全額寄付ね。一晩で、音楽家ZONOとベガス倉園の二役をこなさなきゃだけど、楽しい夜になりそうだね。がんばるよ、オレ。(おわり)

