男塾新章特集⑤『強い思いを宣言する』
いよいよ今週末に迫った男塾新章の最終回。テキストの1ページ目には『強い思いを宣言する』と書いた。企画力の章の基礎編は、「企画とは?」と題して企画書に書かれるべき事柄について解説している。その筆頭に持ってきたのが「強い思い」というわけ。そこで今日はね、今回の新章『企画力・プレゼン力・実行力を磨く』に込められたオレ自身の思いを書いてみようと思う。なぜ、今回、「企画」に関連するキーワードを選んだのか。なぜ、いま企画力が求められるのか。そのあたりを伝えたいな。
まずは「いま」がどんな時代なのか? ここからいこうかな。そうね、2001年あたりからかな。「商売」という世界に大変革が起こった。みなさんご存じのネットの普及だね。オレは、96年にIT雑誌の編集者になった。まだ、ネットが「インターネット」と呼ばれていた時代。いろんな分岐点があったけど、振り返ってみると、まずは「ブロードバンド」の登場がでかかった。
90年代は、いうならば「ネットがあれば将来、こんな世界が来る!」という想像大会みたいな時代。いろいろな可能性が語られていたけど、やっぱり半分は夢物語だったね。ISDNで64kbpsというのが最速の回線じゃあ、やっぱり無理がある。
ところが、ADSLや光ファイバーが格安で使えるようになると、状況は一変する。動画もOK、音楽も無理なく聴ける。さらに画期的だったのが、「通信の定額制」だよね。いくら使ってもお金の心配をしなくてすみようになれば、「使わなきゃ損」ってことだものね。
でもって、第2の革命は「Google」の登場だね。それまで、キーワードを厳選して、いろんな工夫をしてやるのが検索だった。いわば、職人芸の世界。一般の人が適当にキーワード入れても、なかなか目当てのページにはたどり着けなくてね。「検索テクニック」みたいな記事が喜ばれていた。
そこに出てきたのがGoogle。まぁ、使ってみたときの衝撃はいまでも忘れられないね。まるで、優秀なネットサーファーが探してくれているように、思い通りのページがどんどん出てくる。このとき、オレは思ったよ。「ああ、これで商売の世界ががらりと変わる」とね。
あえて3つ目の分岐点を挙げるとすれば、やっぱりケータイかな。iモードが出てきて、ケータイメールや、ウェブの閲覧がとても身近になった。それこそ、高校生からお年寄りまで、あらゆる世代の人々がネット上の情報にアクセスできるようになったんだものね。いまや、ネットの恩恵を受けずに生活している人のほうが圧倒的に少なくなったでしょ。
さて、前置きはこのくらいにして、それによって商売がどんな風に変わったか書かなきゃね。結論はこれ!
「世界中の商品を、あらゆる角度から、簡単に比較検討できるようになった」
ってことね。価格比較サイトや、楽天のような総合モール、加えてオークションの普及。たとえば、「○○」という品番のデジカメがほしいと思ったとき、どこに行けば日本でもっとも安い価格で買えるかが、一瞬にしてわかるようになった。
ネット以前なら、「秋葉原や日本橋に出かけて行って、端から店を見て回り、価格をメモして、ようやく日も暮れるというころに最安値の店が見つかる」って世界だったでしょ。まぁ、個人的には嫌いな作業じゃなかってけどね。いま思えば、古き良き時代の密かな楽しみって感じかな。
価格だけじゃないよ。同一ジャンルの商品やサービスの中味も簡単に比較検討できる。たとえば、我々が提供している「コンサル」という商品。もし、自社で困ったことがあって、だれかにコンサルを依頼しようと決めたとする。テーマが「新入社員の教育」だとすれば、Googleを開いて「コンサル 新人研修」あたりのキーワードで検索すれば、それこそ有名どころのコンサルタントがズラリと出てくるよね。
いま、実際にググッてみたら、142,000件がヒットしたよ。すごいよねぇ。これ、ネットがなかったらどうする? イエローページじゃねぇしなぁ。知り合いに聞くか? まぁ、一見さんだったらそう簡単には見つけられないよね。それが、いまじゃ、家でゴロ寝しながらでも探せちゃうんだからね。しかも、実績や知名度がある会社ほど、上位に表示されるでしょ。まぁ、お茶の子さいさいの世界だよね。
さて、あなたがその会社でコンサルを探す人事担当だったとする。当然、Googleで検索してみるよね。いくつか見つけた候補の中から、どうやって依頼する会社を決めますか? おそらく、こんな流れになるんじゃないかな。
1)コンサルで提供される内容を調べる。
2)導入事例や過去の実績、コンサルタントの知名度などを調べる。
3)価格を調べる。
でもって、1から3までのどこかに「際立ち」を見つけようとするよね。もっともわかりやすいのが、3の「価格」だね。いろいろ調べた結果、おおよそのコンサルの相場が「3日間の研修で200万円」だったとしよう。そこに、「当社は5日間の研修で15万円です!」と謳う会社があったら、「際立っている」よね。内容や実績がどうであれ、間違いなく候補として残る。
あるいは、1、2に差がなかった場合も同様だね。内容や実績が同じならば、やっぱり「価格」が決め手になる。同じ内容の会社をいくつか並べてみて、1円でも安いところを選ぶに違いないよね。ごくごくあたりまえなんだけど、ここはとても重要なポイントだよ。
2の「実績」や「知名度」もわかりやすい部分だね。とくに、社内でプレゼンするときに説得力がある。「なぜ、その会社を選んだのかね?」と聞かれたとき、「なんと、あの有名なA社ですごい実績を残しているんです。さらに、コンサルのK氏が執筆した『鉄は熱いうちに打て!』は10万部を超えるベストセラーになっています!」なんて説明すれば、たいていの上司は納得しちゃうでしょ。
でもって、最後の可能性は1だね。たとえば、30社ほど調べてみて、基本的な内容は似たり寄ったりだったのに、J社だけは「際立って」中味が違う。それも、かなり魅力的で、聞いたことがないキーワードが並んでいるんだけど、もう、気になってきになって仕方がない。価格を見たら「3日間300万円」で、決して安くはないのだけど、どうしても候補から落とせない。こういうのってあるでしょ?
そういえば、先日、時計を買いに行ったのね。最初はメタルバンドのを新調しようと思っていた。そうしたら、とあるメーカーのものすごく個性的なデザインのヤツに一目惚れしちゃったんだよね。でも、ベルトは革だし、予定していた価格の2倍という大幅な予算オーバー。20分くらい悩んだのだけど、結局、その一目惚れを買ってしまったわけ。とにかく、「際立ち」がすごかったのね。他を圧倒するとはまさにこのこと。あまりにかっこよすぎて、「比較にならない」って感じだった。これも、1の「際立ち」が決め手になった例だと思うよ。
つまりね、
「あらゆるユーザーはネットという恐るべき“比較検討ツール”を使って、我々が提供する商品やサービスを吟味しまくる」
これが、いまの時代なのね。ここには同様に、恐るべき購買行動の原則がある。つまり、
「内容や信頼度、実績が同等ならば、価格の安いものを買う」
ってことね。そうねぇ、ブランドイメージなんかも若干は関係していそうだけど、実用的なものであればあるほど、その効力は薄くなるだろうね。よっぽど怪しいメーカーでなければ、やっぱり「安い方を買う」というのが原則だろうね。いま流行のメモリーカードとかは歴然だよね。
ここで、多くの企業は「価格競争」の波に飲み込まれることになる。これが、昨年の金融危機以前の世界だとオレは思っているのね。まぁ、業界で生き残るためには仕方ないことなのだけど、価格競争に入ると、必ず、どこかにしわ寄せが来る。コスト削減、リストラ、減給……。まずは、社員とその労働環境だろうね。価格を下げて薄利でやってかなきゃならないから、まぁ、文句もいえない。
さらに、不幸なことに、製品そのもののクオリティーを落とさざるを得ないという負のスパイラルにも巻き込まれる。価格競争に勝つために原価を抑える。その結果、材料や工場の質を落とすことになるから商品の質も下がる。質の低下はクレームにつながり、ついには消費者からも見放される。という負の流れだね。
どう考えても、「比較検討ツール」を使いこなすユーザーに対して、価格競争で立ち向かうのは不幸だと思わない? いわゆる「サステイナブル」(永続的)ではないよね。どこかに無理がきて、しまいには自らのクビを絞める結果にならざるを得ない。
かといって、2の「実績」や「信頼」「知名度」も、いまはどうにも頼りがない感じがする。時代が変わったんだね。「ソニー? だからなに? DSやWiiのほうがおもしろいじゃん」って感じでしょ。そもそも、新興の企業だったら、商品を売るよりも実績や知名度を付けるほうが難しいわけだからね。
最後の可能性。これしかないとオレは思うわけ。「中味の勝負」だね。先のコンサルの例で書いたように、実績がそれほどなく、価格も他と比べて安いわけでもない。でも、でも、でも! なんか気になって仕方ない。価格が高いからといって、すぐには選択肢から外せない。考えるたびに「予算を上げてみようかな」と思わせられてしまう。
なんというかな、
「冷静、クレバー、クールな頭で比較検討すればするほど、不明確な根拠によって、最後のさいごまで選択肢の先っちょにぶら下がり続ける」
そういうモノを創るしかない。とオレは信じているのね。これはね、いわば、「比較検討ツール」を逆手に取った戦略だと思うんだな。一見、売り手側が不利に見えるいまという時代をポジティブに受け取るなら、
「ユーザーは我々が思うよりもしっかりと、丹念にサービスの中味を吟味してくれる」
となるよね。つまりね、しっかり「際立ち」を創り上げれば、間違いなく「際立つ」のよ。もちろん、わかりやすく、派手に、グサッと胸に突き刺さる「際立ち」じゃなくちゃダメよ。でも、そういうのがあれば、買い手は必ず、見つけてくれる。視点を変えれば、これほど売り手に有利な時代はないんじゃないかな。
そこで、求められるのが「際立ちを持った企画」ってことになるよね。うん、ここからが本当の勝負なわけ。価格競争なんて、だれでもできるじゃない。水泳でいえば「自由形」の世界だよね。もう、ライバルが多すぎてやってられないって感じでしょ。せめて、背泳ぎかバタフライ。できれば、古式泳法くらいで勝負したいよね。
コスト削減、社員が我慢。これって、実は安易な場当たり的対策だよ。じゃなくて、「際立ち」で勝負する。他を圧倒する企画力。商品そのものの絶対的な魅力。ね、希望が溢れるでしょ。モチベーションも保てるし、なによりも、可能性を追求するワクワク感がある。そのうえ、買い手にはものすごく喜んでもらえるわけだからね。
とはいっても、「際立つ企画」なんてそう簡単にポンポン出てくるもんじゃない。そこには、また別の試練が待ち受けている。だからこそ、いま、企画力を磨くためのさまざまな知恵を身に付けなきゃいけない。マーケティングデータやユーザー調査では出てこない「本物の際立ち」はどうやって創造するのか。どうすれば、「理」を超えて感動を内在した商品が創造できるのか。1人で口コミで広がっていくWOWを持った企画が創れるのか?
それらをお伝えするのが、今回の男塾の使命だとオレは思っている。長くなったけど、これが、オレの強い思いですね。先にも書いたけど、最終回は今週の土曜日。9月12日だね。まだ、若干の空席があります。ぜひ、価格競争じゃない世界で「際立つ」ためのヒントをゲットしに来てくださいね。
今日、以前からお伝えしていた『JOYWOW あり方の教科書』の束見本を手に取ることができた。それはもう、可愛くてかわいくて、本当にみんないい仕事したって感じだったよ。自分でいうのもなんだけど、コイツは「際立ってる」ね。うん。でもって、比較検討ツールの時代だから、書店にも置く必要なし! っていうのが我々の考え方。コンサル業界はもちろん、出版業界にも一石を投じられたらと願っているよ。10月1日に特設のウェブサイトで発売を開始する予定。10月17日には、出版記念の「JOYWOWエキスポ」を近代文学館で開催する。その前に、書籍に付属する「秘密のカード」を、JOYWOWメンバーが手作業で創るというロマンチックなプロセスも待っている。後日、詳細はお伝えしますが、オレ自身も「個人男塾」(パーソナルコンサル)を新たに開始する。ホント、楽しみなことしかないって感じだよ、オレ。(おわり)


> 後日、詳細はお伝えしますが、オレ自身も「個人男塾」(パーソナルコンサル)を新たに開始する。
> ホント、楽しみなことしかないって感じだよ、オレ。
今回は男塾に参加できなかったですが、
これは本当に楽しそうですね。
[...] ※「強い思い」=(c)男塾 http://www.joywow.jp/wpoj/archives/665#more-665 [...]