脳を使ってはいけない!
オレの音楽活動の中でとても重要な位置を占めているものの1つに、ギター教室がある。右下のリンク、「ZONOの音楽活動のウェブサイト」にある「ZONO’S Bossa Nova Guitar School」のコーナーに詳細を書いている。現在、生徒数は10人。今年で開講4年目に突入した。一昨日の2月28日、学芸大学駅の近くにある「aozora coffee shop」で2回目の発表会を行った。
結果は大成功! 今回、出演した7人の戦士たちは、緊張に心を折られそうになりながらも、漢(おとこ)らしく(もちろん女性陣も!)、美意識を持って最後までしっかりとやり遂げた。1回目よりもかなり多くのお客さんが来てくれたが、みなさん、口々に「いやー、感動したぁ」とか「本当に来てよかった!」とか言ってくれて、この数年でもベスト3に入るくらいしあわせな一日でしたよ。
今日のテーマは、この発表会で見つけた黄金のキーワード「脳を使ってはいけない」にしようかな。
本番前日の27日、夜9時という遅い時間に「すみません、もう一度、稽古をつけてください」と言ってきたヤツがいた。生徒の中でもっとも古株のK君だ。本職はデザイナー、美人でモデルもやってる奥さんを持つという幸福者。性格は真面目で、正直で、本当に真っ直ぐなヤツ。レッスン料を封筒に入れて渡すという「日本人的美意識」もちゃんと持ってる男だ。
「いまからやってもあんまり意味ないんじゃない?」と言ったのだけど、どうしてもというから、翌日発表する予定の3曲を演奏させてみた。結果はというと、これがボロボロだったんだね。どうしたものかと、天から言葉が降ってくるのを待っていたら、オレの口からこんな言葉が出てきた。
「今日はレッスン料返すわ。その代わり、話をしよう」
不思議だねぇ。自分でもなんでそんなこと言ったのかわからない。なんで金を返したのかもわからない。降ってきたのがこの言葉だったからしょうがないやな。ちなみに、こういう「なんとかしなきゃ」というときは、絶対に頭で考えちゃダメ。自分の全機能を放り出してというか、天にゆだねて、なにかが浮かぶまで待つ。今回も待っていたら、「話をしよう」が出てきたってわけ。
で、オレはK君にこう聞いた。
「演奏してるときなに考えてる?」
ヤツが答えた。
「ギターのフレットを見ながら、”次はこのコードだぞ、間違えるな”、みたいに1つずつ確認してます」
オレは言った。
「まったくダメだね。すっごい勘違いしてる。それじゃ、いい演奏なんてできないよ」
「指先に脳があるんだぜ」と、オレは演奏についての持論を解説し始めた。多くの人は、意識的に脳から命令を送るから体が動くと思いこんでいる。そいつがくせ者なんだなぁ。
たとえばね、ジャグリングの名人がいるとするでしょ。10個くらいの玉を空中に投げて両手でくるくると回転させる芸があるじゃない。あれの名人。彼は、玉を左手で受けて右手に渡し、さらにその右手で空中高く放り投げる。そうしている間にも次の玉が左手に落ちてくるから、すかさず右手に……。みたいなことを全部、脳で考えてやってると思いますか?
あるいは格闘家の場合。目に見えないくらいのパンチが飛んできました。意識的に脳から「パンチが来たぞ。左に頭を30センチ傾けてよけるんだ!」と指令を出して、それで紙一重でよけてると思う? もっとわかりやすい例。自転車乗れるよね、みなさん。あれって、右に傾いたら右にハンドル切ると体制が立て直せるんだけど、iPodとか聴きながら「ハイ、右に切って!」とかやってる人がいたらヤバイよね。自転車乗ってるときこそ、「脳を使ってない」でしょ。
ギターもまったく同じ。K君は真面目なヤツだから、オレのいいつけどおり、毎日、練習し続けてる。練習の成果は指にしっかり刻まれる。その結果、指先に脳があるかのように、まったく意識せずに動かせるようになる。大切なのはそれを「信じるかどうか」だけ。信じないとどうなるか。脳から余計な指令を送ってしまうんだな。そうすると、脳の指令と指先の脳が混線して、本来、動くはずの指が震え始めるんですよ。
「そうかぁ。練習のときもいつも”こう動かせ!”って頭で考えてましたよー」
そう言ってさらにうなだれるK君に、「じゃ、もう一度、指を信じて頭を真っ白にしてやってみて」とオレは言った。
イントロの刻みがもう違う。乾いて澄み切った鈴なりのようなギターの音が、部屋の空気を変える。続いてK君の歌い出し。やさしく、力強く、まろやかな心地よい声。いつも間違える部分をスラリとクリアしていく。
「どうよ!」
「ハイ! やっぱり、今日、来てよかったですぅ」(泣)
当日のK君。リハーサルではやっぱりボロボロ。「考えるな」と言われても、難しい。すぐにはできない。これまで考えることを頼りにやってきたんだからね。命綱を外されたみたいな感覚だったんでしょう。1人、カフェを抜け出してどこかへ消えてしまった。たまたま、K君がぼんやりと道を歩いてるところに、生徒の中でもイチバン度胸のすわったH子さんが通りかかった。
H子:「どうしたの?」
K君:「もう帰りたい……」
H子:「あんた、そんなことしたら出入り禁止だよ」
K君:「それでもいいから、今日は逃げたいです」
さすがに心配になったH子さんは、オレにそのやりとりを教えてくれた。「まぁ、自分の人生だからね。逃げるのもよし、戦うのもよし」。そんなことを言っていたら、K君、神妙な面持ちで帰ってきた。で、本番。
「じゃ、聴いてください」
そう言って、弾き始めたイントロは、前日の最後に聴いた、あの澄み切った鈴なりの音でした。ヤツは自分の脳に勝ったんだね。偉いぞー。
「おまえは漢(おとこ)だ!」
演奏を聴きながら、熱くなる目頭を押さえながら、オレは心でそうつぶやきました。
ちなみに、オレのギタースクールには「ノーマルコース」と「男塾コース」の2つがある。発表会に出られるのは「男塾コース」のヤツだけ。で、男塾コースだと今回みたいな「話」が聞ける。レッスン料は同じ。入会するときに、どちらにするか選んでもらうんだけど、いまだに「ノーマル」を選んだ人はいません。
「考える」ことで解決できることなんて、この世にわずかしかないとオレは信じている。考えるなんてことは人間の活動の初歩の初歩なんじゃないかと。その先 にある、創造とか、企画立案とか、人とのコミュニケーションとか、勝負ごととかは、「考える」のレベルじゃとても無理。音楽とかの「表現」になってくると、もう 「考える」とは完全に別次元の営みなんじゃないかって思うね。
はい、今日の話はこんなところかな。任天堂DSとかであるでしょ。「脳を鍛える」みたいなゲーム。あと、趣味で資格取ろうとかする人。はっきり言うぜ。そういうの、全部、「学校の勉強後遺症」ね。脳を使って記憶して、それをどこかで披露して「よくできました」って言ってもらう快感から抜け出せない人たち。そういうことばかりやってると、「指先に脳がある」なんて感覚、一生わからないから注意してね。
そもそも、遊びとかゲームとか趣味とかって、「ムダなこと」じゃないとダメなんだよ。意味のないこと、バカなこと、ただやるだけ。それがいいんじゃない。ゲームやりながら頭よくなろうとか、趣味と実用を兼ねてとか、めちゃくちゃセコイぜ。浅ましいというか、余裕がないというか。そんな了見だから、年末宝くじに何万も遣っちゃうんだよ。
はい、今日もやっぱり長くなりました。ウェブとかメルマガでこんな長い文章を書くのは御法度なんだぜ。でもね、JOYWOWのコンサルには絶対厳守の7か条というのがあって、その中に「常識をもの差しにしない」と書かれている。だから、長くてもよし。おもしろければ読むし、つまんなかったら「長い」と思われるだけのこと。なので、みなさん、ぜひ、「おもしろい」とかコメントしてね! そうじゃないと、K君みたいに1人で道を彷徨っちゃうぜ、オレ。(おわり)


先日の発表会、とても良かったです!
楽しませていただきつつも、自分が
人前で演奏することをずーっと想像して
いたので、終始、手に汗びっちょりでした(笑)。
ZONOさんの頭で考えない話、良く分かります。
私が考えてしまう時は、自分に自信がなくなっている
時です。自分を信じることはあらゆる幸せに直結すると思います。
これからもこの「男塾BLOG」を楽しみにしています♪