偉大なる素人集団
男塾では「プロフェッショナル」という言葉をとても大事にしている。そして、これを仕事というものへの取り組み方や姿勢を表す概念と位置づけている。もちろん、その対極には「アマチュア」、素人といった言葉があるのだけど、ある意味、オレはこのアマチュアリズムも大切にしなければいけないものと捉えているんだな。ただし、この場合は「働き方」ではなく、「経験」「知識」という意味でのアマチュアを指す。
なんだかよくわからないよね。うん、だから、そのことを今日は書いてみようと思うわけだ。究極のアマチュアリズム。それがなにを意味するか。煮詰まった業界に風穴を開けるときにもこれが必要。ありきたりな発想ではなく、度肝を抜くようなアイデアにも不可欠。「知らぬが仏」「恐れ知らず」、そんでもって「非常識」。そんなパワーを持つものじゃないかと思う。言い換えるなら「オンリーワンへの道」って感じかな。
オレは、IT雑誌の編集長だった時代、ある闘いをやっていた。ITの世界を技術だけで語るのではなく、カルチャーの面から切れないかという挑戦だね。詳しいいきさつやらは省略するけど、その取り組みの1つとして「クリエイター列伝」という連載を立ち上げてみた。ネットに関連する(途中でネットは全然、関係なくなっちゃったけどね)さまざまなクリエイターに、熱い思いを語ってもらうという記事だった。
その中で、いまでも強烈に印象に残っている方が、長岡賢明氏だったね。D&DEPARTMENTという会社を立ち上げ、それはもう素敵なカフェをオープンし、ものすごく愛着のわくリサイクル雑貨なんかも販売していた。オレの自宅近くに直営1号店があったから、当時は毎週のように通っていたのね。で、いつかこれを作った人に話を聞きたいと思っていたら、「クリエイター列伝」が始まった。もう、速攻でアポをいただいて取材が実現したというわけ。
当時の雑誌から正確に抜粋したいところなんだけど、いまは倉庫の奥の方にしまってあるから、取り出すのは勘弁してもらって、記憶をたどりながら長岡さんのお言葉を綴ってみようと思う。
「うちはカフェを立ち上げるときも、リサイクル雑貨の販売を始めるときも、“経験者”は一切、使わなかった。なぜなら、経験者はなにかをやるときに、“これはこうするものだ”と決めつけてしまう。カフェの料理ならこれこれこんな風にやるのが普通とか、雑貨ならこうやれば売れるみたいに。それじゃあつまらないと思う。だから、アマチュア集団からスタートした。知識や経験がゼロの状態から始めて、自分たちで研究を重ねて、紆余曲折しながら自分たちだけの道を見つける。そうしてできたものだからおもしろい。
たとえば、うちでグラスを売ってみた。結果は大失敗。なぜかまったく売れない。で、1年くらい智恵を絞り合って試行錯誤をしていくうちに、ガラスの板の上に陳列するというアイデアが出た。試しにやってみたら、これが売れるのなんの。ボクらは“すごい発見をした!”と喜んでいたのだけど、西武百貨店とかに行ってみたら、あたりまえのようにそれをやっている。あとで聞いたら業界の常識だったそうだ。
もし、グラスを売り始めたときにそういう分野の経験者がいたら、なんの苦労も智恵出しもなしに、その人はガラスの板を使ったはずだ。当然、グラスはすぐに売れただろう。でも、ボクらが実際にやった1年間のトライ&エラーから得られたものの方が、数倍、価値があると信じている。なにか新しいことを提案するのに、経験や常識ほど邪魔になるものはない。偉大なる素人集団であることに誇りを持っている」
こんな感じかな。もう8年くらい前のことだから、記憶も定かではないのだけど、オレの心の中に残っている言葉は確かにこういう感じだった。
オレは、この話を聞いて以来、「オンリーワンというのはこうしてできあがる」と、ずっと信じ続けているね。長岡さんの話にはいくつかポイントがあるでしょ。まずは、「時間と効率」だよね。多くの企業は「速く、手間をかけずに」を目指すよね。だれがいったのか知らないけど、「ドッグイヤー」なんて言葉があったじゃない。「早くやらないと先を越される」みたいな脅迫観念。うちのけーちゃんこと阪本啓一はそれに対して「スローなビジネス」を提唱した本を書いたけどね。
1年かけてグラスの売り方を研究する。焦らず、ビビらず、どっしり腰を据えてだよね。なんか、「熟成」って言葉がいま浮かんだな。遊んでいるわけじゃなく、熟成させているわけさ。時間をたっぷりかけてね。一朝一夕にできあがるものなんて、やっぱりたかがしれている。しょせんは「Easy come easy go.」だよね。
それから、「内部に知的財産を蓄積する」っていうのもものすごく大事なことだよね。この対極にあるのが「アウトソーシング」。まぁ、こいつもいってみれば「手っ取り早く」ってことなんだろうけど、手詰まりになるとすぐに簡単な方にいっちゃう。おそらく、本当に会社のことを考えている経営者はそう簡単には仕事を外に出さないよね。出せば、目先の目的は達成されるよ。でも、その仕事をとおして得られる経験や学びという貴重な財産は社内にまったく蓄積されない。
そうね、栄養失調のもやしっ子みたいな感じがするなぁ。頭はいいけど底力がまったくない感じのヤツ。効率の弊害がここにもあるよね。
ヘッドハンティングなんかもこれに近い。いい人材が社内で育たないから、手っ取り早く社外から取る。オレの経験ではそうやって来た「優れた人材」が本当に優れている確率って1割満たない気がするな。たいていはハズレ。その人が悪いのではなくてね、やっぱり会社というのは歴史や文化があるんですよ。外からやってきて、すぐにそれに適応できる人なんてまず、いない。すぐに、部下から不満の嵐が巻き起こって、そのうちに働きにくくなってて辞めていく。そんなことの繰り返しじゃないかな。
で、もっとも重要なのは「スタッフに失敗させながら学んでもらう」ってことだよね。いや、もっと正確にいえば、経営者も含めて全員で失敗しながら学ぶんだよね。これがやれる職場ほどしあわせなものはないとオレは思うな。実践の場で失敗できるって、なかなかないからね。机の上の理論でもないし、新人研修でもない。そんなものから得られるものなんて屁みたいなもの。それより、身が震えるような本番で失敗してこそ、本当の仕事人が生まれるんだよね。
それにしても、そんな試行錯誤のなかである程度の成功までちゃんと食いつないでいけたってのが、実はミラクルなんだと思うわけですよ。多くの経営者はこれを読んだら間違いなく反論するよね。「そんな悠長なことやっていてどうして利益があげられるんだ」ってね。でも、D&DEPARTMENTは創業から今日まで大成長を遂げているのだからね。ちゃんと得るべきものは得ながら、中味を熟成させていけたすごい例なんだよね。
オレが思うに、ある職場にあとから経験者が入ってくるっていうのは、また別の意味で問題があるんじゃないかと。これは想像力の世界なんだけどね、自分が経験者だとしましょう。で、期待されてある職場に入っていくよね。最初になにを思うか。たぶん、こうだよね。
「いかにして自分の実力を白日の下にさらせるか」
どう? 絶対にそうだよね。とにかく実力を見せなきゃならない。で、なにを使ってそれをやるかというと、「知識」だよね。知識を誇示しなきゃならない。「ね、オレがいる意味があるでしょ」てな感じだわ。さらに、それがもっとも功を奏するタイミングってどこかというと、「他の人が悩んでいるとき」でしょ。これが最悪なんだよね。悩んでいるときというのはチャンスなんだよ。
「オンリーワンが生まれるチャンス」
なんですよ。なぜ悩むか。「すでにある商品やサービスと同じ道をたどれない」と思うからでしょ。人まねでいいのなら、悩む必要もない。「なにか画期的なことをやってみたい」と望むから悩むわけ。そこで、経験者がチャンスとばかりにこれまでの経験から得られた「知識」を出しちゃう。一生懸命考えている子供に、先に答えを教えちゃうダメな教師みたいなもんだよね。
さらにタチが悪いのが、それがまた正論だったりするじゃない。そりゃそうだよ。長年の経験でそれなりにうまくいくと証明されている知識なんだからね。不幸なことに、素人さんたちにはそれを論破するほどの智恵も度胸もない。だから、自然の流れとして、その経験者が出した「ありきたりの知識」を採用せざるを得なくなるわけ。
ね、最悪でしょ。前にも書いたけど、いま「ものが売れない時代」といわれている。イケイケのときはいいんだけどね、こういう冬の時代にこそ、ムダとも思える長い時間をかけて「変なこと」を編み出さないといけないんじゃないか。それをやるためには偉大なる素人集団が必要なわけですよ。
最初に書いたけど、「知らぬが仏」がいいんだよね。経験者はダメ。怖さを知っちゃってるからね。まず、思いきったことができない。周りから見ていて「ヤバイ」と思うくらいがちょうどいいとオレは思うね。
そうそう、逆の立場からも考えて見なきゃね。「自分が経験者だったら」ってね。オレだったら、いま書いてきたようなことを肝に銘じて、できる限り「常識」をシャットアウトするね。「わかったようなことをいったら負け」ってね。経験者には経験者にしかできない発想があるはず。それを素人集団と同じ土俵に立ったうえで、頭を真っ白にして出そうと努力するだろうな。ある意味、それって最強なのかもしれないよね。
なぜか、今週いっぱい超多忙な日々が続くんだよね。前に話した「JOYWOW教科書」、第一稿が上がってきましたよ。早くその編集に取りかかりたいと思うのだけど、今週の山が超えてからだね。まだ、ざっくりとしか読んでいないけども、それはそれは面白いものができそうだね。今年の目標は、自分のCDを出すことと、このJOYWOW教科書を全国販売すること。でもって、この男塾ブログも本にしたいとか思い始めている。もっともっと忙しくなるね。本当は予定やアポがゼロで家から一歩も出ないでいい日がイチバンしあわせなんだよね。って、前に「しあわせは行動とともにある」なんて書いた人がする発言じゃないよね。まぁ、いい加減だわ、オレ。(おわり)


ZONOさん Blogでは初めまして!
このお題、ぐっさり きました。。仕事し始めて15年以上たち、経験者と呼ばれる域に達し、
「あー、こうしたらいいのにな」と思うことを、つい口にしてしまう・場合によっては、
ちゃっちゃとやってしまうことの多い今日この頃。。
経験の上にもっと積み上げると、もっと良いものができると思っていたんですけど、
一回同じ土俵に立ってみる勇気が必要なんですね。。。 うー、、大変です。
「経験者のくせに。。しらないの?」と言われそうなことへの恐れとの戦い
手を出したくても、ちょっと待ってみる忍耐
いざとなったら面倒をみてあげられるだけの度量
が求められるし、常に高周波に自分を保って、いい流れの中じゃないと難しいと理解しました♪
この気持ちをもって月曜日のミーティングに臨みます!
(今頃なんでこんなテーマでディスカッションしなきゃいけないんだよ。。というようなテーマで
時間の無駄ちゃうかと思っていましたが、どうやら私に大きな意味があったみたいです。)
ありがとうございました! がんばろ。