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今週のコラム

今週のコラム~◆振り幅をでっかく by 倉園 佳三

メルマガ44号で掲載された内容です。

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ZONOコラム
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◆振り幅をでっかく

「メールにインターネット、ゲームに音楽、ビデオ編集、これすべてできません!」。テレビのCMで、この衝撃のキャッチコピーを聞いてから、オレは「pomera」(ポメラ)というデバイスの虜になってしまった。

開発したのはKING JIMという文房具メーカー。メインの商材は書類を閉じるファイルだ。でもって、かなり気になったので、ウェブサイトをよーく見てみると、なんと、あの「テプラ」を作ったのもこのKING JIMだということがわかった。

「独創的な商品を開発し、新たな文化の創造をもって社会に貢献する」という経営理念どおり、またここに、超独創的なポメラが誕生したというわけだ。

iPhoneを筆頭に、携帯キャリア各社は「多機能」を売りにしたモバイルフォンを次々と発表しているよね。音楽も聴けて、GPSも付いて、ワンセグも見られて、ウェブもメールも自由自在。最近ではおサイフケータイなる、決済機能まであるのがあたりまえ。じゃあ、それらを否定的に見てきたのかというと、オレの場合は全然、違う。

超が付くほどの新しモノ好きであるオレは、むしろ、大歓迎というか、新製品が出るたびに機種変更を繰り返している。ノートパソコンしかりPDAしかり、新デバイスと名の付くもので、買っていないものはないと自慢できるほどの機器マニアなのだ。

そんなオレにとって、「メールにインターネット、ゲームに音楽、ビデオ編集、これすべてできません!」を最初に聞いたときの衝撃は本当にすごかった。「え、なんて?」。自分の耳を疑うとはまさにこのこと。

すぐさまテレビを注視し、「じゃあ、なにができるわけ?」と画面のデバイスに釘付けになった。その正体を知って驚きは100倍。要は、テキストを打つだけ。文字を書くだけの単機能デバイスだというから、もうアタマの中は混乱を極めたね。

「つーか、そんなもの、なんで今の時代に出しちゃったの?」っていうのが最初の反応。で、「だれが使うわけ?」が次のステップ。しばらくボーッとして、約5分後、気がついたら無意識のうちにGoogleで「ポメラ」を検索している自分がいたというわけ。

ポメラのウェブにたどり着いたときには、もう強烈に「これ、ほしい!」って気持ちになりまくってた。

「これで文章書いてみてぇ」「新幹線の中とかで書いてみてぇ」「あ、ホテルでも書きたい」「あと、いろんなとこに持って行って自慢したい!」。そんな思いがグルグル回ったね。

こうなったらもう、KING JIMさんの大勝利。ネットで最安値を探して、マイクロSDカードと専用ケースと一緒に、「カートに入れる」のボタンを押してしまっていた。で、この10年くらいの間で、ここまでオレを虜にしたデバイスがあったかを振り返ってみたのだけど、やっぱり、こいつがイチバンのような気がするね。

2日後にブツが到着したのだけど、箱から取り出して、電池を入れて、折りたたみのキーボードを開いて、適当に文字を打ちながら、最初にイメージしたのは「KING JIMの制作会議」だったのよ。職業柄なのかね。

こんな得体の知れない新商品が、会議でどんな風に扱われたのか。もう、これが気になって気になって仕方なかった。普通はあり得ないでしょ。この時代に、文字を打つだけの単機能デバイスを売り出すなんて発想。しかも、店頭価格で1万6千円という値段だから、それほど安くもない。これが3千円くらいだったら納得なんだけどね。普通に考えたら、企画した人間は「おまえ、アタマがおかしいんじゃないか?」ってさんざんこき下ろされて、瞬時にボツになりそうだよね。でも、ポメラは実際に売られ、オレはまんまとそれを買っている。

で、使っているうちにね、わかってきたのよ。「これ、新しい!」ってことにね。文章を書くというのは「ひらめきの作業」でしょう。ノートパソコンを起動している数十秒に、そのひらめきが色褪せてくることがある。「無線LANも、余計なソフトもいらないから、とにかくすぐに書かせて!」。オレの脳がそう叫ぶことがよくある。

その点、ポメラちゃんは瞬時に起動だからね。コイツの正体は文字を書く機器ではなく、「ひらめきに追いつくデバイス」だったというわけ。多機能あたりまえのデバイスが1.0とするなら、単機能かつ人の求めるなにかに忠実に間に合うデバイスは2.0。そういう新しさがあるんじゃないかと。これは間違いなく、これからのトレンドのヒントになるよね。

でもって、もっとも重要なのはそういうデバイス2.0を生み出せる「会社の姿勢」だと思う。言葉はよくないけど、ある種の狂気。バカさ加減。経験とか常識とかを寄せ付けない圧倒的な独創性。

つまりは、「振り幅のでかさ」なんじゃないか。そして、それを受け入れる会社としての器量。これに尽きるよね。オレ自身も、KING JIMを見習うべき点がたくさんあるように思う。最後に、驚きの数字を1つ。

このポメラ、発売から12か月で3万台を目標にしていたらしいのだが、初回ロットは発売と同時に完売。貸し出し用のサンプルも不足気味。当初の予測を大幅に超えて売れまくっているとのこと。ね、やっぱ勇気だよね。オレたちもポメラに負けずに、「振り幅をでっかく」いきたいね。


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